ツーリングトーク バイク談義

オフロードバイクの整備とツーリングキャンプのノウハウ

エンジンオイル交換

エンジンオイル交換

役割と必要性

役割と必要性

人間の心臓に当たるエンジンは、生み出した“力”をチェーンやシャフトを利用してリアタイヤに伝え、トラクションを得ます。エンジンオイルは、このエンジンが円滑に動くために必須のもので、潤滑の他にも密封、冷却、洗浄、防錆等の役割を担っています。オートバイのエンジンオイルは劣化しやすく、定期交換を行わないと、エンジンそのものが劣化して行きます。

なぜなら、オートバイは車と比べると排気量辺りの出力が大きく、逆にエンジンオイルの容量は小さくなっています。更にクラッチオイルとミッションオイルを兼ねている車種が多く、車と比べるとより過酷な状況下で潤滑を行っているからです。

以下、潤滑、密封、冷却、洗浄、防錆の役割です。

潤滑
エンジン内(シリンダーの内側)では、ピストンが激しく上下しています。ピストンの上下運動はクランクシャフトから回転運動に変えられます。また、シリンダーヘッドにはカムがバルブの開閉を行っていますが、カムシャフトが回転しています。
上下運動や回転運動は摩擦が発生しますが、この摩擦を軽減しているのがエンジンオイルです。

密封
シリンダーの内側を上下しているピストンの直径は、シリンダーの内径より若干小さく作られています。ピストンにはピストンリングが2本から3本着けられていて、この若干の直径の差を埋めていますが、それでもほんの僅かですが、シリンダーの内径よりもピストンリングの外径の方が小さくなっています。
この僅かの差の隙間をエンジンオイルが埋めています。
走行距離の大きなオートバイのオーナーが良く「オイル上がりがする」と言うのは、シリンダーが摩耗して内径が大きくなり、ピストンリングが摩耗して外径が小さくなって、この隙間が大きくなってしまい、エンジンオイルの密封の力では埋めることが出来ず、隙間からエンジンオイルが上昇してシリンダー内に入ってしまうことを指します。

冷却
エンジンはガソリンを燃焼させて力を得ているので、大変に高温となります。また、毎分数千回の回転する上下運動や回転運動によって摩擦熱が発生します。これらの熱を冷却する役割をエンジンオイルは担っています。一般にオートバイのエンジンは空冷式か水冷式ですが、高回転型、高出力型のエンジンではオイルクーラーを搭載して、オイルの冷却を計っているものもあります。

洗浄
古くなったエンジンオイルは黒っぽい色に変色しています。これは、エンジン内の汚れをエンジンオイルが取り込んでいるためです。汚れはスラッジとも呼ばれていますが、ガソリンの燃焼の燃え残り、金属同士の摩擦で発生した金属粉などです。
このスラッジは増えることはあっても減ることはないので、エンジンオイルを交換しない限る、オイルの中のスラッジは増え続けて行きます。

防錆
エンジンは金属なので錆びます。エンジンオイルがエンジン内部の表面に存在することで防錆効果が得られます。

交換の時期

交換の時期

エンジンオイルの交換の時期は、オートバイのマニュアル等には3000キロから6000キロ、オイルフィルターの交換の時期は、オイル交換2回毎となっています。
この走行距離を目安としたオイル交換を、絶対に行わなくてはならないという事はありません。日本一周ツーリングや北海道ツーリングなどの長距離ツーリングを行っていると、1日に500kmや1000kmを走ることもあるので、厳密に3000kmを越えたらオイル交換、6000kmを越えるまでにオイル交換、と言う訳にはいきません。

わたしの場合
長距離ツーリング中は5000kmを越えたら1万kmに達するまでにオイル交換をする様にしています。このため、事前の計画で今度のツーリングの総走行距離が1万km未満と分かっているときはオイル交換はしないと計画に盛り込むこともあります。
日帰りツーリングなどをこなしているときは、おおむね5000kmを越えたら交換をする様にしています。

忘れやすいのが、半年間、一年間と長期間オートバイに乗らないときのオイル交換です。エンジンオイルは酸化でも劣化をするので、一度もツーリングに出かけなくても、オイルは半年くらいで多少の劣化をしています。
このため、エンジンオイルの交換は、走行距離5000km、もしくは半年のどちらか早く来た方のタイミングで行う様にしています。

用意しておくもの

エンジンオイル。
交換の時期ならオイルフィルター。
ドレンプラグ。エンジンオイルを抜く穴のボルトのことです。オフロードバイクの場合、石や岩にヒットしてボルトの角が潰れたりして変形することがあります。1個交換用の予備として持っておくと、いざというときに慌てないで済みます。
Oリング。ドレンプラグのワッシャーの事です。わたしは自分でオイル交換をするときには交換したことは無いので、7万9千kmのあいだ、一度も交換をしなくても不具合が発生しないことを知っていますが、気になる方はオイル交換前にOリングも交換しているようです。しっかりとしたバイクショップでは、オイル交換の時のOリングも交換しています。

使用するツール

使用するツール

ボックスレンチ、もしくは眼鏡レンチ。
使用する工具はボルトの角なめを防ぐために、必ずボックスレンチや眼鏡レンチを使用します。スパナは使いません。レンチは点でボルトの角を支える眼鏡レンチでは無く、面でボルトの六面全てを支えるボックスレンチの方がお薦めです。

写真のレンチは、上がボックス14mmを着けたラチェットレンチ、中がKTCのミラーツールのボックスレンチ、下がメガネレンチとスパナのコンビネーションです。
わたしの通常のオイル交換にはラチェットレンチを使用してます。レンチの柄の長さがあまり長いと、テコの原理でボルトに必要以上の力が加わってしまい、万一ボルトが固着しているとボルトの頭を切ってしまうことがあります。このため、レンチの柄の長さは適度に力を加えられる様に短すぎず長すぎないものを選びます。
KTCミラーツールのボックスレンチはなじみの薄いレンチですが、ツーリング持参用です。絶対に角を舐めることが許されないボルトなので、高価なこのレンチを使用しています。
メガネとレンチのコンビネーションは使い勝手が良いので、大抵の整備に使用していますが、オイル交換には使いません。

車と違ってオートバイのエンジンオイルの上抜きは出来ませんから、エンジンオイルのドレンプラグを舐めてしまうと、最悪、エンジンオイルの交換は、以後は出来ないという事になりかねません。
万一、ドレンプラグを舐めてしまった場合は、修理工場に出すようにします。決して自分で何とかしようとはしないことです。

作業の開始 オイルの入れ口を開ける

作業の開始 オイルの入れ口を開ける

エンジンオイルの交換は最も一般的な整備の一つでしょう。レンチがあれば誰でも出来ますが、ちょっとした知識があれば万一のトラブルを事前に防ぐことが出来ます。無理をするとドレンプラグ(ボルト)の頭を切ってしまい、修理不能という最悪の事態が発生する整備でもあります。

まず、エンジンオイルを交換する前に、入れ口を緩めておきます。
これは、万一、入れ口のネジが固着している場合、先にエンジンオイルを抜いてしまうと、オイルが空になってしまい以後の走行が出来なるので、それを防ぐためです。

ドレンプラグを緩める

ドレンプラグを緩める

レンチでドレンプラグを緩めます。
エンジンオイルは高温となっているので、軍手をしてドレンプラグに触っても相当に熱く感じます。

手でドレンプラグを取る

レンチでドレンプラグを緩めたら、手でドレンプラグを取ります。
熱いので、レンチの先端部分だけを取り出して、それを手で回します。

手で回す理由ですが、万一、ドレンプラグかオイルパンのネジ山に僅かでもネジ山の潰れた箇所があった場合、手で回せば必ず気づくからです。
レンチを使って廻してしまうと、僅かなネジ山の潰れには気がつきません。

僅かなネジ山の潰れを初期に発見すれば対処できますが、次回以降のオイル交換まで放っておくと悪化する可能性があります。ネジ山が潰れてしまうと、ドレンプラグが取れない、あるいは取れたものの再度の取り付けが出来ないという可能性があります。

オイル抜きとドレンプラグのネジ山の確認

オイル抜きとドレンプラグのネジ山の確認

エンジンオイルを抜いている間に、ドレンプラグのネジ山に異常が無いか確認をします。

ドレンプラグを締めオイルを入れる

ドレンプラグを締めオイルを入れる

エンジンオイルを抜けきったらドレンプラグを締め、エンジンオイルを入れます。Oリングはこのときに新品と交換します。

ドレンプラグを締める際には、締めるトルクに注意しましょう。締めすぎるとネジの頭を切ってしまったり、次回のオイル交換で舐めてしまう可能性があります。締めが緩いと走行中にドレンプラグが緩んでしまい、オイルが空になっていまいます。

不安があれば、トルクレンチを事前に購入しておきます。

エンジンオイルの買い方

わたしの場合
長距離ツーリングを年に数回するときには4L缶を購入して、ツーリングの事前準備中にオイル交換も行ってしまいます。この場合は、4L缶を一年間で消費します。
長距離ツーリングは年に一回、後は日帰りツーリングは数泊ツーリングの年には、オイル交換する前日までに1Lのオイル缶を購入します。
わたしのオートバイのオイル容量はエレメントを交換無しでは、約1Lなので、4L缶なら4回分。1L缶なら1回分となるので、管理がしやすいです。

それと、レッドバロンのオイル交換サービスの会員登録をしているので、長距離ツーリング中は日本各地のレッドバロンの店舗でオイル交換が出来る様にしてあります。以前は、ツーリング中のオイル交換は、バイク用品店でオイルと廃油処理用品を購入してから、キャンプ場などでオイルを交換していたのですが、ゴミ捨て置き場がキャンプ場などに無くなってしまったので、レッドバロンを利用する事にしました。

品質

API規格
わたしはドーナツマークと呼んでいますが、アメリカ石油協会(American Petroleum Institute)が定めたエンジンオイルの品質のことです。国際規格なので、国内メーカーのオイルの他にカストロールやBP(ブリティッシュペトロリアム)など世界中のオイルメーカーの品質を比較できます。

ガソリンエンジンではSAからSMまであります。Aが低くMが高くなります。
現在、国内で市販されているエンジンオイルでは、SE、SFが一番下の品質でしょうか。SAやSBやSCはまず見かけません。
SFかSG以上の品質のオイルを使用すれば良いでしょう。

SAE規格
アメリカ自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers)の定めがオイルの粘度の規格です。

ドーナツマークの中心には品質のSFなどの表示の下段に粘度が表示されています。
0W-30や10W-30や20W-40と書かれています。
先の数字が低温での粘度、後の数字が高温での粘度です。WはWinterの略です。
先の数字が低いほど、冬場でエンジンが冷え切ったときに始動性が良くなります。
後の数字が高いほど、長時間高回転で運転したときや、渋滞でエンジンとオイルの冷却が不十分なときでもエンジンオイルの油膜切れが起きにくいことを表しています。
オートバイの場合は、エンジンオイルの他に、クラッチオイルとミッションオイルも兼ねているので、メーカー指定の粘度のオイルを使用します。

粘度が低いオイルは摩擦も小さくなるので、燃費が良くなります。このため、低粘度のオイルをエコオイルとして宣伝される場合があります。しかし、燃料代の節約のためと粘度の低いオイル0-30を入れたら、「クラッチが滑ってしまった」と言う話があります。

逆に、長時間、高回転で走るから、と言うので20W-50のオイルを入れたまま、冬を迎えたら、エンジンオイルが固くなったので、「セルをイクラ廻してもエンジンが掛からなかった」、と言う話もあります。

メーカーによる違い

多数のメーカーのオイルが商品棚に並んでいますが、品質と粘度に気をつければ、違いを体感することは無いでしょう。
わたしは、ペンズオイル、カストロール、BPの他に、各バイクメーカーの純正オイル、カインズホームやイエローハットなどの車専門店のプライベートブランドのエンジンオイルを使用してきましたが、体感できるほどの違いはありませんでした。

もちろん、エンジンのオイル上がりなどの現象の発生時期も、メーカーの違いは無いようです。

バイクメーカーの純正オイルと言っても、ホンダやヤマハがエンジンオイルを作る設備を持っているわけでは無いので、コスモ石油などに依頼して製造しています。
また、ハーレーやドゥカッティなどでは純正オイルそのものがありません。

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