スズキ ジェベル XC250のオーバーホール
ロングツーリングのバイクとして根強い人気のスズキ ジェベル XC250のフロント周りのオーバーホールの解説です。ジェベルは廃番となってしまいましたが、それだけに大事にしてあげたいバイクです。大切に整備をすればジェベルに限らずバイクは驚くほど長い寿命があります。
ジェベル XC250はDR250と殆ど共通の車体とパーツを使用しています。DR250はジェベルよりも部品点数が少ないので、ジェベルの整備が出来ればDR250の整備は楽にこなせるようになります。
※:写真撮影のために素手で写っていますが、実際の作業は軍手を使っています。決して素手で作業をしないでください。
フロントフォークに取り付けてあるネジを緩めます。
緩める順番は常に対角線上のネジを緩めてゆきます。
ネジを対角線に弛めます。
弛めるだけではずしません。
アクスルシャフトを弛めます。
弛めるだけではずしません。
写真では市販のレンチを使用していますが、付属工具のレンチを使用してもかまいません。
必ずレンチを使用してください。
スパナは絶対に使用しないでください。
ブレーキパッドの交換や点検、あるいはブレーキ本体のオーバーホールも行うのであれば、ブレーキキャリパーを固定しているネジとブレーキパッドを固定しているネジもこのときに弛めます。
ネジは弛めるだけではずしません。
詳しくはフロント・ブレーキパッドの交換を参照ください。
整備スタンドでフロントタイヤが地面から浮くようにします。
ここまで弛めてきたネジは固く固定しているので、浮かせてから弛めようとすると転倒する危険があります。
浮かせる前にネジを弛めてください。
弛め忘れたネジが見つかった場合は、無理をせずに一度フロントタイヤを地面に着けてから弛めてください。
整備スタンドですが、わたしの使用しているスタンドはツーリングなど出先で整備を行う簡易的なものです。わたしはツーリング中でもタイヤ交換などを行うので、慣れるために常にこのスタンドを使っていますが、転倒などの危険性がありますので、一般の方は専用のがっしりとした整備スタンドを買われることをお薦めします。
1万円前後で手に入ります。
アクスルシャフトを止めているネジをはずします。
手ではずします。
ネジに傷などが付いている場合、手ではずすと傷の部分できつくなりはずせなくなるので、ネジに傷が付いているなどの異常に気がつきます。
オーバーホールをする時には、ネジ1本まで気を配って、傷などを見つけるようにしてください。
アクスルシャフトを取り外します。
レンチで軽く回せば外れます。軽く回しても廻らない場合は、錆が発生している、傷が付いている、汚れがひどい、などの原因がありますので、アクスルシャフトをはずしたら、原因が何かをチェックしてください。
アクスルシャフトを取り外すとタイヤが落ちます。
バランスが崩れるので、落ちないようにタイヤのしたに自分の足のつま先を入れておきます。
はずしたタイヤ(ホイール)を置きます。
ベアリング部分にゴミがついたり、傷が付いたりしないように、地面にウエスを敷いてから置きます。
フロントフォークに取り付けられている部品をはずします。
写真はスピードメーターケーブルの固定用の金具のネジです。
フロントフェンダー(泥よけ)についているスピードメーターケーブルを固定する金具のネジをはずします。
フロントフォークの蛇腹のネジを弛めます。
取り付けられている位置を覚えておいてください。
フロントフォークと車体を固定しているネジを弛めます。
12mmのボルトで、かなりきつくしまっています。必ずレンチ、メガネスパナなどを使用してください。
ライトカバーとフロントフォークを固定しているネジを弛めます。
フロントフォークと車体を固定しているネジを弛めます。
この部分はハンドルカバー(ナックルガード)に干渉してレンチが入らない場合があります。そのときにはハンドルカバーのネジを弛めてずらしてから、レンチを入れてネジを弛めてください。
フロントフォークを途中までさげます。
抜き取りませんので注意してください。
フロントフォークを一時的にこの位置で固定します。
フロントフォークのフォークオイルを交換する場合には、ここでフォークの上にあるボルトを弛めます。
フォークオイルを交換しない場合は必要ありません。
フロントフォークを抜き取ります。
一度、取り外したネジは、後で取り付ける時にどのネジか分からなくならないように、部品と一緒に着けておくと、取り付ける時に作業が楽です。
ブレーキキャリパーがついている側のフロントフォークを取り外す作業にかかります。
フロントフォークに取り付けられている部品をはずします。はずしたネジは、元の所に着けておくと、無くしたり、取り付けの時にネジの種類が分からなくなってしまうことが防げます。
フロントフォークに取り付けられている蛇腹のネジを弛めます。
蛇腹の位置を覚えておいてください。取り付ける時に参考になります。
フロントフォークと車体を固定しているネジを弛めます。
後で絞めますので、はずさないでください。
フロントフォークと車体を固定しているネジを弛めます。
このネジは、やや奥まったところにあるので、ハンドルカバー(ナックルガード)をずらさないとレンチが入らないかもしれません。
また、このネジは、ブレーキホースを固定する金具も一緒に止めているので、はずす時はそれほどでもありませんが、取り付ける時に手間取るかもしれません。どの様に取り付けられているのかしっかりと覚えておくと良いでしょ。出来れば手持ちのデジカメか携帯で写真を角度を変えて何枚か撮影をしておくと良いでしょう。
フロントフォークとライトガードを固定しているネジを弛めます。
フロントフォークを途中まで降ろしたら、ネジで固定します。
フロントフォークを固定しましたので、一番上のネジを弛めます。
フォークオイルの交換をしないのであれば、この作業は必要ありません。
フロントフォークを2本とも抜きました。
バランスを崩してオートバイが倒れると、起こすのが至難なので注意してください。
フロントフォークの一番上のネジをあらかじめ弛めてありますので、レンチで回すとフロントフォークのネジが外れます。
外れると写真のようになります。
フォークオイルの交換の詳細はフロントフォークオイルの交換をご覧ください。
14mmの合わせネジになっています。
2つのスパナを使って弛めてください。
希に固くしまって緩まないことがあります。
スパナしか工具が使えないので、無理をすると必ずネジをなめてしまいます。
そのときにはバイクショップへ持っていってください。
フロントフォークのネジをはずすと写真のようになります。
皿の様な部品を取ると、バネが取り出せます。
フロントフォークのバネを抜き取ったら、フォークを逆さにしてフォークオイルを抜き取ります。数回、フォークを上下させると底に溜まったオイルが抜けますので、必ず逆さの状態で上下させてください。
写真のフォークオイルは2004年式、走行距離約8500kmのジェベルのものです。今年中古車で購入をした車両ですが、想像ですがおそらく1度もフォークオイルは交換していなかったのだろうと思います。
エンジンオイルも新車では最初の交換は早めにしますが、フォークオイルも新車の時は3000km位で一度交換すると良いです。
作業中にフォークオイルが抜けるように、写真のように逆さにしておきます。オイルは燃えるゴミの日に出せるような製品が販売されていますので、その中へ捨てます。
フロントフェンダー(泥よけ)をはずします。
普段あまりチェックをしない泥よけを、この機会に洗ってきれいにして割れ等をチェックします。泥よけに限らず、オーバーホールをするときは各パーツのチェックをします。
※:この写真の泥よけは左側に1本割れている箇所がありました。
(この写真は2002年式の古いジェベルのものです)
ハンドルを取り外します。
ネジはたすきがけで弛めてください。
工具は必ずレンチやメガネスパナを使用してください。
ハンドルを固定しているネジを取り外したら、ハンドルを持ち上げます。
ハンドルのしたに大きなナットがついています。これを大型レンチ、もしくは大型のメガネスパナで弛めます。
非常に固く絞められているので緩まないことがあります。そうした際の非常手段として、長いパイプを用意して、レンチに差し込み、てこの原理で回します。
注意したいのは、最初から端を握って回さないことです。写真のように、最初はパイプの中ほどを握って、ゆっくりと力を加えてください。それでも緩まなければ、徐々に端に握る手を動かして、回してください。
万一のネジ切れなどの防止措置です。少しでも手応えがおかしいと感じたら作業は中止してください。
先ほど取り外したハンドルを仮止めします。
のちの作業をやりやすくするためです。きつく締める必要はありません。(この写真は2002年式の古いジェベルのものです)
ハンドルごと上に持ち上げます。
ステアリングナットが出てきます。
ハンドルを止めているナットを取り外します。
本来は専用の工具が必要なのですが、写真のような方法でも取り付け、取り外しは可能です。
このとき、取り外すトルクを体で覚えておいてください。 専用工具でもトルクははかれませんから、体で覚えておくしかありません。
ステアリングナットを弛めたら後は手ではずします。
ステアリングナットをはずすとステアリングが落ちます。
各種のワイヤーやホースが着いているので地面に落下することはありません。
フロント周りを外し終えたところジェベルです。
正確にはハンドル周りはついたままです。
ステアリングの下側のベアリングに着いているグリースをウエスでふき取ります。
ベアリングの受け皿(このベアリングは上側)のグリースもふき取ります。
ベアリングにグリースを塗り込みます。
古いグリースがはみ出してくるまで根気よくこの作業を続けます。
ステアリングの上側のベアリングも同様にグリースをふき取った後、グリースを塗り込みます。
受け皿の古いグリースをふき取ることを忘れずに行ってください。
ベアリングのグリースアップを終えたら、ベアリングを置きます。
上下のベアリングのグリースアップを終えたら、ステアリングを持ち上げて戻します。かなり重いです。上側のベアリングの穴に確実に入れるように注意してください。間違えて上側のベアリングを落とすと、砂などが付着してしまいやっかいとなります。
ステアリングナットを手で締めます。
手で締められなくなったら、弛めた時と同様のやり方で、ドライバーで軽くたたきながら絞めて行きます。絞めすぎたり、緩かったりしないように注意してください。
ハンドルを置きます。
ハンドルを仮止めしていたボルトをはずし、ハンドルを取り外します。
ナットを締めます。
軽く手で締めてください。
工具を使って、きつく絞めないでください。
工具は後で使います。
ハンドル周りの作業が一通り終わりましたので、フロントフォークの作業に取りかかります。
まず、フォークオイルを入れます。
フォークオイルを規定量だけ入れたら、バネを入れ、皿を入れます。
弛めた時と同じ手順でナットを締めます。
手で締められるだけ絞めたら、軽くレンチで増し絞めします。
フォークオイルが付着していますので、ウエスでふき取ります。
仮絞めしたフロントフォークを車体に差し込みます。
写真のように、上と下の穴がずれています。
フロントフォークを途中の位置で絞めます。
フロントフォークの上のネジを締めます。緩まないようにきつく絞めてください。
フロントフォークの上のネジを締め終えたら、フォークを固定しているネジを弛めます。
フロントフォークとライトガードを固定するネジを入れます。
よく忘れる部品なので、注意してください。
忘れても、ネジを弛めてフォークを少しさげれば、写真の様に簡単に入れられます。
フォークの取り付けの高さに注意してください。
左右の高さが違うと操縦性に影響が出ます。
フロントフォークを左右差し込み終えて、高さの調整も終えたら、ネジを増し絞めして固定します。
ステアリングのナットを工具を使って増し締めします。
パイプは使いません。
右のライトガードを固定するネジを締めます。
左のライトガードを固定するネジは、ブレーキホースを固定する金具も合わせて止めるので、ネジ締めは多少やっかいです。慣れないうちは時間がかかるかもしれません。根気よく行ってください。
スピードメーターのカバーに開いている穴をライトガードのぽっちりと合わせて固定します。
忘れやすい箇所なので注意してください。
ライトガードのバンドを固定するネジを締めます。
ハンドルを固定します。
最初にハンドルを置き、手回しで前側のネジを2本先に締めます。
次いで、後側のネジを2本締めます。
上記の順で手で締めると、この様になります。
後側にスペースが出来ます。
この後側のネジを工具で絞めます。
ハンドルを絞め終えたところです。
真上から撮影しました。
わたしはハンドルが遠目な方が好きなので、わざとこの様な配置にしています。本来だと、ハンドルバーが上下のネジの真ん中を通りますが、わたしの場合は上側のネジの上をハンドルバーが通っています。
必要ならアクスルベアリングのグリースアップを行います。
わたしの場合、フロントタイヤの交換の時に、通常はベアリングのグリースアップを行っていますが、それほど手間と時間のかかる作業ではありませんので、オーバーホールの時も行うことがあります。
Oリングをはずすには、マイナスドライバーをOリングとベアリングの間に差し込んで右か左にねじってください。Oリングが浮き上がります。
ベアリングのグリースアップの詳細はフロントホイール・ベアリングのグリースアップを参照ください。
Oリングをはずすと、内側にもう1つのカバーがあります。
このカバーは精密ドライバーのマイナスではずします。
カバーとベアリングの隙間にマイナスドライバーを差し込んで、上へ持ち上げてください。
我流の方法ですが、クレ556はグリースを熔解する作用があります。556を吹きかけて古く劣化したグリースを洗い流します。
ただし、556がブレーキディスクに付着するとブレーキの利きが悪くなるので、お薦めはしません。
グリースを指先にたっぷりと着けて、ベアリングに塗り込みます。
何度も繰り返し塗り込んで、ベアリングの奥にまで新しいグリースが行き届くまで繰り返してください。
通常、古いグリースはこの方法で押し出して新しいグリースをぬります。
グリースアップを終えたら、カバーを被せます。
カバーからはみ出したグリースをウエスでふき取ります。
フロントは片側だけOリングが着いていますので、指か手の平でOリングを押し込みます。
グリースアップの作業はこれで終了です。
アクスルシャフトをウエスでふき取り汚れを落とします。
アクスルシャフトにグリースを塗ります。
薄くまんべんなく塗ってください。
塗る理由ですが、数年間、アクスルシャフトを抜かないと固着してしまうのでその固着を防ぐことが第一。さび止めが第二です。
スペーサーの汚れを落とします。
スペーサーをホイールに組み込みます。
スペーサーはOリングにはめ込むようになっています。横からの力が加わるとすぐに落ちてしまい砂などが着いてしまうので、組み付け後の取り扱いには注意してください。
ホイールにスピードメーターを取り付けます。
アクスルシャフトを通します。
アクスルシャフトをレンチで回します。
写真のように、指先でくるくる回せるくらい、軽く回してください。指先で廻らなくなったら、一旦絞めるのを止めてください。
アクスルシャフトを固定する金具とネジを取り付けます。
指で回して絞めてください。
たすきがけにネジを締めてください。
金具を取り付けたら、アクスルシャフトを増し絞めします。
レンチで力を込めて絞めてください。
このとき、スピードメーターが後側に廻ろうとするので、手で押さえて廻らないように調整をしてください。
アクスルシャフトの固定用の金具のネジを増し絞めします。
たすきがけで増し締めをしてください。
フェンダーを取り付けます。
フェンダーに着いている金具は接着剤などで着けられていないので、写真のように取れます。しっかりと管理して作業をしないと、金具だけが脱落して見つからないと言うことになりかねません、注意してください。
泥よけをフロントフォークの間に差し入れます。
斜めに入れると入ります。
フェンダーを止めるネジは手で締めてください。
奥まって作業がやりにくい場合には、写真のようなドライバー型のレンチを使ってください。
フェンダーを止めるネジを手で締め終えたら、レンチでたすきがけで増し絞めします。
スピードメーターワイヤーを固定している金具を取り付けます。
スピードメーターワイヤーを固定している金具を取り付けます。
蛇腹を止めているネジを増し絞めして固定します。
フロントを浮かしていた整備スタンドをはずします。
フロントブレーキのパッドが減っている時や、調子が悪い時には、同時に交換や整備をします。
ブレーキパッドの詳細はフロント・ブレーキパッドの交換を参照ください。
以上で作業は終了です。
作業終了後は必ず試運転を行ってください。
ブレーキの利きや、ハンドルがぶれたり左右どちらかに取られたりしないか、などを確認してください。
試運転を終え、異常がなければ、作業は終わりです。
お疲れさまでした。
H.N.うーたん(Yuichi Mizunuma)
当サイトの執筆・撮影とシステムの製作等全てを行っています。林道への案内板やクライミングトークのWebMasterでもあります。使用バイクのジェベルXCは1997年型、2002年型と乗り継ぎ、三台目の2004年型のジェベルXCを売却して、現在はバイクツーリングには行っていません。、これまでのツーリングの総走行距離は約21万kmです。
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2013年まで、春夏秋冬、北海道から九州沖縄まで、ツーリング・登山・サイクリング・パドリング(カヤック)をしています。年間のテント泊数は40泊から60泊程度、日帰りを含めると年間80日くらいはアウトドアにいました。
現在は東京都八王子市高尾に在住しています。オートバイから少し離れていて、主に登山とサイクリングを趣味にしています。
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