往年の名車のリアリンクのO/H
DT200R-3ET-はDT200WRやランツァ、DT125などとフレームが共通の他、部品にも共通しているものが多く、3ETのメンテナンスが一通り出来るようになると、3ET以降の車種のメンテナンスも楽に行えるようになります。
DT200Rのリアのアクスルシャフトを止めているボルトは、通常はRピンでとめられています。ただ、このDT200Rは年式が古くRピンはすでに朽ちてしまっているので、太い針金で代用しています。
ボルトを外します。
ネジをなめないようにボックスレンチ、もしくは眼鏡レンチで作業します。モンキースパナなどは絶対に使用しないでください。
チェーンの長さを調節するチェンプラを緩めます。
左右両方についています。
後で取り付ける際に迷わないように、このときのチェンプラの位置を覚えておきます。1から順に番号が振ってあるので、どの位置で固定されていたか、簡単に分かります。
左右のチェンプラを緩めたらチェーンを外します。
上側のチェーンをスプロケットから外し、タイヤを廻すと簡単にはずれます。
チェーンを外したら、アクスルシャフトを取ります。
低年式車でメンテナンスを怠っているバイクの場合、アクスルシャフトがさびて固着している場合があるので、その時はプラハンマーで叩いて出してください。
アクスルシャフトを取ると、ホイールは簡単にはずれますが、希にブレーキパッドとブレーキディスクがあたってはずれない事があります。その時はブレーキパッドの隙間を開いてから外してください。
ホイールを外した後、泥よけを外します。
リアリンクを1つずつ緩めてゆきます。
整備マニュアルには緩めてゆく順番が書いてありますが、経験上、あまり順番にこだわる必要はありません。
リアリンクをとめている箇所の内、リアクッションの下側をとめている部分です。
ボルトを緩めて、たたき出したところ。
上記を取り外したところです。
取り外しがボルトや部品は分からなくならないようにメモを取ったり、置く場所を分けたり工夫をしてください。
リアクッションを下側でとめているボルトを緩めます。
DT200Rはこの部分はグリースを圧入したり出来ないので、大抵はさびた上、摩耗しています。実用上問題はないのですが、錆や摩耗が気になるようでしたら交換してください。
このDT200Rは1度交換をしてあります。
リアリンクをつなぎ止めているピボットシャフトのボルトを緩めます。
かなりきつく締め付けてあるので、ネジをなめないように注意してください。ボルトそのものは頑丈なので、しっかりしたボックスレンチを使用しているのでしたら、長い棒をレンチの把手に継ぎ足してトルクをじわじわとかけて外す事が出来ます。
ピボットシャフトをプラハンマーでたたき出したところです。
さびて固着しているわけではないのですが、素手で引き出すにはきつく入っているので、たたき出す場合が多いです。
ピボットシャフトを抜きます。
低年式車の場合、錆が浮いている事が多いので、傷や変摩耗の他、錆のチェックも必ずしてください。
写真はブレーキホースの留め金を外しているところです。
DT200Rに限らず、大抵のオフ車は樹脂製の留め金を使用しているのでネジを外す必要はないのですが、低年式車の場合、樹脂が堅くなっていて外そうとすると折れてしまいます。念のため金具ごと取り外しておきます。
ピボットシャフトを取り外したらリアリンクとリアクッションをとめてあるボルトを外します。
これでリアリンクは車体から完全に離れます。
リアリンクをとめているボルト類を外し終えたら、リアリンクを取り外します。
リアリンクと車体の間は狭いので、無理に引き出して傷を付けたりしないように気をつけてください。
DT200Rの場合、リアクッションが邪魔になるので、リアリンクを取り外す際には、横に手で押しつけると良いです。
リアリンクを取り外すと、そのさらに奥にチェーンローラーが固定されています。このローラーを外しておきます。
チェーンローラーを外さないと、リアリンクを固定しているリレーアームを外す事が出来ないからです。
上記の作業を終えたらリレーアームを取り外します。
泥やグリース、チェーンルブが固着しているので、固着物がベアリングなどにつかないように注意してください。
リアショックの上側の留め金のグリースアップをするために、シート、燃料タンク、サイレンサーを取り外します。
上側の留め金はシートの下に隠れているので、2、3年以上ほおっておいてもグリースが切れる事はありませんが、このときは念のため点検しました。
リアショックを固定しているボルトを緩めます。
リアショックを固定しているシャフトを点検します。
このシャフトは3年前にグリースアップをして以降、点検をしていませんでしたが、まだしっかりとグリースが残っていました。
5年位はノーメンテナンスで持ちそうです。
リアリンクに使用されているベアリングをグリースアップします。
写真はリアアームに組み込まれているカラーを取り出しているところです。
上記のカラーを取り出すと、リアアームの中に組み込まれているベアリングを見る事が出来ます。
このベアリングをグリースアップします。
古いグリースをウエスなどで拭き取り、そのあとで新しいグリースを指先で塗り込んでゆきます。このとき、使用するウエスの糸くずなどがベアリング内に残らないように注意してください。
リアアームのベアリングにグリースを指先で塗り込んでいるところです。
リアリンクのベアリングはモリブデン配合のグリースが指定されています。
間違っても、通常のグリースは使用しないでください。
ベアリングのグリースアップを終えたら、カラーの汚れも落としておきます。このDT200Rはカラーに若干の錆が浮いていました。
リアアームにカラーを組み込んだところです。
リアリンクに組み込まれていたシャフトを洗浄します。
写真はピボットシャフトです。
うっすらと錆が浮いているのが分かると思います。
サンドペーパーで錆を落としておきます。
ただし、一度錆が浮いてしまうと、メッキがはげてこの後はどんなにこまめにグリースアップをしても錆やすくなります。
チェーンガードをとめているシャフトです。
このシャフトも錆が浮いていました。
リアクッションとリアリンクを固定していたシャフトです。
グリースを圧入出来ないので、真っ赤にさびているほか、変摩耗も起こしていました。ただ、この程度の摩耗なら許容範囲です。
上記のシャフトをサンドペーパーで磨き終えたところです。
錆を落とし終えたらグリースアップをしておきます。
シャフト類、リアアームなどのパーツの洗浄とグリースアップが全て終えたところです。
何度もオーバーホールをしていると、こうして並べておくだけでどの部品かは分かりますが、初めてオーバーホールをする方には見分けがつきにくいと思います。
リアリンク本体に組み込まれているベアリングをグリースアップします。
ベアリングのグリースアップだけではなく、リンクにこびりついている泥やグリースも落としておきます。
リアアームを取り付けます。
リアアームを取り付け終えたら、チェーンローラーを取り付けます。
この順番を間違えて、いきなりリアリンク本体を組み付けると、後で全てばらさなくてはならなくなります。注意してください。
全てのベアリングのグリースアップとパーツの洗浄が終了したらリアリンクを車体に組み付けます。
外した時を同じ要領です。
ピボットシャフトを組み付けます。
リアクッションを組み付けます。
リアクッションの下側を固定しているシャフトはグリースが流れて落ちやすいのでたっぷりとグリースをつけておきます。
リアアームとリアリンクを固定します。
チェーンガードの向きや裏表に注意して取り付けてください。
リアリンクに部品類を組み付けます。
写真はブレーキホースを取り付けているところです。
リアリンク本体の組み付けが終了したところ。
リアリンクの各部にあるジュロンニップルからグリースを圧入しておきます。
組み込む際にたっぷりとグリースを塗り込んでおきましたが、実際に組み込んだ後、グリースを圧入するとかなりの量が入ります。
DT200Rに限らず、バイクのリアリンクのジュロンニップルの位置は奥まったところにあったりするので、グリース圧入ガンのクチがストレートだと届かない事があります。
写真のようなフレキシビリティ型だと、大抵のジュロンニップルにグリースを圧入することが出来ます。
グリースを圧入すると、最後にはジュロンニップルのクチからグリースがあふれ出てきますので、これをふき取ります。
このグリースの拭き取りを忘れると、ジュロンニップルに泥や埃がこびりついてしまいます。
泥よけを取り付けます。
通常はタイヤ交換の際に行うのですが、このときはタイヤの山がまだ残っていたので交換にはまだ間があるので、このときに行いました。
グリースを覆っているOリングはマイナスドライバーで写真のように取り外すと、何度でも使用できます。
ホイールを組み付けます。
アクスルシャフトにグリースを薄く塗布してから、組み付けます。
グリースを塗布しておくと、さびて固着する事をある程度防ぐ事が出来ます。
チェーンを組み付けます。
チェンプラは一番緩くなる位置にしておきます。
チェンプラをチェーンの長さに合わせて、最適の位置に調整します。
左右を交互に、少しずつ調整して、最適の位置を見つけるのがこつです。
右だけ、あるいは左だけを最初に調整して締め付けると、チェーンが張りすぎたり、緩みすぎたりして再調整が必要となってしまいます。
ボルトを締め付け、Rピン(ここでは針金)でボルトが脱落しないようにしたら、ホイールの組み付けは終了です。
リアリンク他、外した箇所のネジを全て増し締めして、締め忘れがないか確認します。
といっても、ホイールを組み付けた後では手の届かないリンクをとめているボルトもあるので、組み付けながら確認をしてゆきます。
リアクッションの上側のグリースアップのために外しておいた、燃料タンク、シート、サイレンサーを組み付けます。
全てのパーツを組み付け、増し締め、確認を終えたら、試乗しておきます。
軽く走って異常な振動や異音の発生がなければ、作業は終了です。
このときは整備用スタンドが曲がって作業中にバイクが転倒してしまい、ブレーキパッドの留め金が曲がるアクシデントがあり、試乗したときに激しい異音が発生しました。
おまけの写真ですが、整備中に折れ曲がった作業用のスタンドです。
このスタンドは車重140kgまで使用できるのですが、7年以上使用していたので継年劣化で折れ曲がったものと思われます。
幸い、バイクが転倒したときはバイクから離れたところで作業をしていたので大事には至りませんでしたが、万一リアリンクの組付けを行うためにバイクの下に潜り込んでいたらと思うとぞっとしました。
H.N.うーたん(Yuichi Mizunuma)
当サイトの執筆・撮影とシステムの製作等全てを行っています。林道への案内板やクライミングトークのWebMasterでもあります。使用バイクのジェベルXCは1997年型、2002年型と乗り継ぎ、三台目の2004年型のジェベルXCを売却して、現在はバイクツーリングには行っていません。、これまでのツーリングの総走行距離は約21万kmです。
×閉じる
2013年まで、春夏秋冬、北海道から九州沖縄まで、ツーリング・登山・サイクリング・パドリング(カヤック)をしています。年間のテント泊数は40泊から60泊程度、日帰りを含めると年間80日くらいはアウトドアにいました。
現在は東京都八王子市高尾に在住しています。オートバイから少し離れていて、主に登山とサイクリングを趣味にしています。
SNSのURL
facebook Yuichi Mizunuma
twitter Yuichi Mizunuma
×閉じる