ベストセラーオフロードバイクのO/H
長距離ツーリング向けのバイクとして最も人気のある車種の1つ、ジェベルのリアリンクのオーバーホールを行います。
オフロードバイクは各社構造が似ているので、オーバーホールでも似たような作業が続きますが、このアームがどうしてもはずれないなど、メーカーの設計思想や車種による違いが多少あります。
このあたりも具体的に解説します。
リアのアクスルシャフトをととめているボルトを外します。
緩めるときだけタイヤを地面に付けた状態にして、少し緩ませたが、リフトでリアタイヤを浮かせてからボルトを外します。
万一、ボルトをなめないように写真のようなボックスレンチか、ボックスレンチが無ければ車載工具の眼鏡レンチを使用してください。
くれぐれもモンキースパナなどは使用しないように。
アクスルシャフトが緩んだらチェーンを外します。
チェーンを外し終えたらアクスルシャフトを抜き取ります。
数年アクスルシャフトを抜いていないバイクの場合、さび付いて固着している場合があるので、その時はプラスチックハンマーで軽くたたき出してください。
タイヤを取り外したところです。
右下に見えるのはクルマ用のジャッキです。
先日のDTの整備の時、整備スタンドが折れてしまったので代用として使用しました。
車体の下に潜り込んで泥よけを取り外します。
林道を頻繁に走っているバイクの場合、ネジが泥で覆われていて、無理にネジを廻そうとするとネジ山をなめてしまうので、そうしたときは水で洗車してから作業をしてください。
リアリンクをとめているボルトを1つずつ外してゆきます。
細かな外す順番はありません。
かなりきつく締まっているので、写真のようにボックスレンチにパイプを継ぎ足して廻すと簡単にはずれます。
奥まったところにあるリアリンクのアームを取り外します。
レンチの大きさによっては入らない箇所なので、眼鏡レンチなど、複数の工具を用意しておくと良いでしょう。
アームを固定している最後のボルトを外します。
このボルトを外すとアームを固定しているアルミのパーツがとれるので、前後と表裏を後で組み付ける際に間違わないように、しっかりと覚えておくか、メモをとっておいてください。
リアリンクのアームをとめている金具を押し出しているところです。
この部分はベアリングが内蔵されてるのでリンクやアームにこびりついている泥や砂がベアリングに付着しないように慎重に作業を行ってください。
上記の作業を反対側から見たところです。
金具が押し出されているのが分かります。
金具を取り外すと、ショックとリアリンクをつなぎ止めているアームを外します。
バイクの下に潜っての作業となります。
リアショックアブソーバーをとめているボルトを外します。
このボルトだけは径が小さいので、力を入れすぎてネジ山をなめたりしないように注意してください。
リアリンクに固定されているチェーンガードを外します。
チェーンガードを固定しているネジはプラスネジですが、ネジ山に土と砂が詰まっているので、針金や釘の先で掻き出してから外してください。そうしないと必ずネジ山をなめます。
ブレーキホースを外します。
上記のチェーンガードのネジと同様にここのネジも泥が詰まっているので、針金で掻き出しています。
バイクで使われているボルトの中で、最も堅く締め付けられている1つがこのボルトです。
かなりの力を入れて緩めます。
リアリンクのシャフトを抜きます。
固着していないまでも、ややきついのでプラスチックハンマーで軽くたたき出してください。
リアリンクのシャフトを抜きました。
重要な部品なので、ゴミなどが付いたり傷つけたりしないように、注意を払いましょう。
リアリンクが緩んだところです。
しかり、まだリアリンクを外すことは出来ません。
リアリンクとリアショックをつなぎ止めていたアームを取り外します。
チェーンがリアリンクに干渉しないために取り付けられているコロを取り外します。
かなり狭いところにレンチを差し込んで廻ります。
取り外したコロです。
左側の車体に付く側にワッシャーが付いているのが見えると思います。小さな部品で亡くしやすいので注意してください。
最後のボルトを取ります。
リアショックの後ろに隠れています。
このボルトはコロを取ってからでないとはずせない位置にあります。
取り外したばかりのリアアームです。
泥で汚れています。
後の作業でこの泥がベアリングやシャフトに付着するので、汚れをきれいに落とします。
上記のリアアームの汚れを落としたところです。
このあと、このアームに組み付けられているベアリングを取り外してグリースアップします。
上記のリアアームのベアリングをグリースアップしているところです。
指で新しいグリースをベアリングに押し込んでゆき、古いベアリングを押し出してゆきます。1つのベアリングにつき5回から10回以上この作業を繰り返します。
ベアリングやアーム以外の、シャフトの外側に面した部分の清掃を行います。
部品に凹凸が多いので、写真のように針金を使いやすいように曲げて作業をします。
取り外したアーム、ベアリング、シャフト類の全ての清掃が終えたところです。部品点数が多いので、この清掃とグリースアップだけで1時間前後かかります。
リアリンクの清掃を行います。
最初にリアリンクそのものの泥や汚れを落とします。
ついでリアリンクに組み付けられているベアリングをグリースアップします。
リアリンクに組み付けられているベアリングをグリースアップします。
ベアリングの中に入っているコロです。うっすらと傷ついているのが分かると思います。
このバイクは25日間連続で雨の中をツーリングしたほか、台風上陸の中の風速20m以上の暴風の中を10時間以上にわたって走り続けたことがあり、そのときリアリンクのベアリングに水が入り変摩耗したものです。
リアリンクのベアリングのカバーです。
カバーの裏側には泥がこびりついています。この機会に全てきれいにしておきましょう。
ベアリングを組み付けたら、グリースガンでグリースを圧入します。使用するグリースはモリブデン配合のグリースを使用してください。
ジェベルはリアリンクのジュロンニップルの位置が悪く、タイヤを外さないとグリースを圧入出来ない箇所が1つあります。
忘れがちですが、先に外したコロのシャフトにもグリースを塗布することを忘れないでください。
コロの脇にあるシャフトを組み込んだら、ついでコロを組み付けます。外した順番と逆に組み立ててください。
リアリンクを差し込みます。
リアショックが邪魔になるので、傷つけないように左右にショックを動かしてリンクを置くまで差し込んでください。
ピボットシャフトを差し込みます。
差し込む前に、さび付きによる固着防止のために全体に薄くグリースを塗布してください。
ブレーキホースを取り付けます。
スズキのネジは精度が悪いので、整備マニュアルに掲載されているトルクでしめただけでは簡単に脱落することがあります。
重要なネジなので、ネジ止め剤を塗布してからネジを締めてください。
リアリンクとリアショックアブソーバーをつないでいるアームを取り付けます。
最初にリアショックとアームを固定します。
アームの車体側を固定します。
そのあと、リアリンク側を固定します。
金具を取り付けます。
差し込み式なのですが、写真で見て左側のシャフトが車体と干渉してかなり入りづらくなっています。ちょっと時間がかかっても傷を付けたりしないように、慎重に行ってください。
金具とシャフトを押し出すと、反対側に出てきます。
余分なグリースは走行中に泥が固着する元となるので、このときにふき取っておきましょう。
チェーンガードを固定します。
チェーンガードには亀裂防止のための金具が付いています。取り付けるときになくさないようにしてください。
リアリンクのオーバーホールとは関係ありませんが、機械があるごとにベアリングのグリースアップを行っておくと後々のトラブルの防止につながります。
大して時間はかかりませんので、機会があれば必ず行いましょう。
ベアリングを覆っているOリングをマイナスドライバーで外します。マイナスドライバーを差し込んで左右にねじるとOリングが持ち上がり、簡単にとれます。
このとき、Oリングが傷んでいたら交換してください。Oリングが傷んでいると、グリースアップも無駄になります。
グリースアップを終えたところ。
古いグリースを新しいグリースを指先で押し込むことで取り出します。
泥よけを取り付けます。
泥よけの亀裂防止用のワッシャーがあるので、取り付け忘れに注意してください。
アクスルシャフトにグリースを塗布します。
グリースを塗布することによって、さび付きによる固着を防止することが出来ます。
ツーリング先でのパンクの時などに役立ちます。
タイヤを組み付け、アクスルシャフトを通します。
ブレーキパットとブレーキディスクの干渉に気を付けてください。
摩耗したブレーキディスクは淵が盛り上がっているので、希にすんなりと入らないことがあります。
チェーンののびをアジャスターで調整します。
必ず左右同時に調整してください。左右でバランスを間違えると、バイクがまっすぐに走らなくなります。
ボルトを締め付けます。
力一杯きつく締め付けてください。
念のため外したネジの増し締めをしておきます。
リアリンクは特に重要な部分なので念には念を入れましょう。
完成です。
試験運転で軽く近場を走っておきましょう。
このとき、異音などがしたらチェックをします。
H.N.うーたん(Yuichi Mizunuma)
当サイトの執筆・撮影とシステムの製作等全てを行っています。林道への案内板やクライミングトークのWebMasterでもあります。使用バイクのジェベルXCは1997年型、2002年型と乗り継ぎ、三台目の2004年型のジェベルXCを売却して、現在はバイクツーリングには行っていません。、これまでのツーリングの総走行距離は約21万kmです。
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2013年まで、春夏秋冬、北海道から九州沖縄まで、ツーリング・登山・サイクリング・パドリング(カヤック)をしています。年間のテント泊数は40泊から60泊程度、日帰りを含めると年間80日くらいはアウトドアにいました。
現在は東京都八王子市高尾に在住しています。オートバイから少し離れていて、主に登山とサイクリングを趣味にしています。
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