ヒグマと出くわす
実際にヒグマに出会うまでは、会いたくないと思いつつも、頭の隅ではせっかく北海道にきたのだから、話の種にヒグマと出会うのも悪くはないな、と思っていたのも事実です。
とくに林道を中心に走り回っていたので、出会う確率は高いはずだと思っていました。
ヒグマと出会ったのは1999年の夏です。出会った場所は道北の有名な観光地で、観光ガイドには必ず掲載されているところです。
地元の観光に支障が出る可能性があるので、詳細な地名は伏せます。
時刻は午後6時前後、8月なので日没の時間です。雨が降っていたので時間よりも薄暗くなっていました。有名な観光地に隣接する野営場で野営をしようと考えていました。
野営場に到着し、バイクに乗りながら「東屋でも有れば雨を気にせずにテントを張れるのに」と野営場内を物色してからふと前を見ると、ヒグマがいました。
距離はこの時は50mくらいは離れていたと思ったのですが、顔の輪郭や細かい特徴まではっきりと覚えている所を見ると、もっと近かったようです。
わたしも驚いたのですが、ヒグマも驚いたようで、すっくと立ち上がりました。体長は2m前後でした。驚いたもの同士がしばらくの間、身動きもせず見合っていました。
先に我に返ったのがわたしの方で、ここで襲われたら食べられてしまうという恐怖から、何とかバイクの向きを変えようと必死になりました。しかし狭い道の上、運の悪いことに道路脇には側溝が掘られていたので落ちそうになり、何度も切り返しをしますがなかなかUターンができません。
しかし、こちらがUターンを終える前に、ヒグマも我に返ったらしく、反対の方向に走り去って行きました。
ここまでの記憶ははっきりしているのですが、それ以後は滝上村にたどり着くまでほとんどありません。気が付いたら滝上村の中心部を走っていました。
掲載した画像は阿寒湖ミュージアムに展示されているヒグマの剥製で、体長は2mです。
わたしの出会ったヒグマは、この剥製より上半身はもう少しほっそりしていましたが、全体的にがっしりしていました。朝からの雨で体毛が濡れて体に張り付いていたので、細りと見えてたのかもしれません。
耳はもう少し大きく、顔の先端、鼻から口にかけては狐のようにとがっていました。
北海道を訪れるライダーが一番会いたがる野生の動物はヒグマでしょう。わたし自身は一度ばったりと出会っていますが、実際に出会うのと同じくらい、ヒグマが確実に生息している林道を夜間通過するというのも怖いものです。
1998年8月、函館の西、木古内町と知内町をむすぶトンガリチリチリ林道を夜間に走ったときです。
林道の入り口にさしかかったときはすでに日は暮れていたので、林道内で完全に真っ暗となることは分かっていました。林道の入り口には掲載した写真の立て札が立っていて「ヒグマ出没中」と書かれていました。日没の前後はヒグマの活動が活発な時間帯なので、今日の通過はあきらめて、翌朝通かとも考えたのですが、ヒグマは日没だけでなく早朝も活動時間だったことを思い出したので、同じ危険を冒すなら早いほうがよいだろうと、そのまま林道に入りました。
林道は暗闇の中だったのと、ヒグマの恐怖もあったのでできるだけのスピードで走り抜けました。そのためどのような様子の林道だったかは良く覚えていません。北海道の林道としては以外にアップダウンが多くしかも急勾配、きついコーナーが連続していたと思います。
この話は1999年夏のことでしたが、北海道から戻ってからトンガリチリチリ林道で3人の方がヒグマに襲われ死傷したことを知りました。このため大がかりな山狩りが行われ1頭のヒグマが射殺されました。
しかし射殺されたヒグマの体長は1.5mなので、人間を殺傷するにはちょっと小さすぎます。おそらく3人の方をおそったヒグマとは別のヒグマでしょう。現在もトンガリチリチリ林道はヒグマの目撃が多く、2002年の時点でゲートにより閉鎖されています。
北海道ではヒグマの目撃は多いです。
大抵の林道の出入り口には「00月00日にヒグマが目撃されました」と書かれた看板が立っています。
わたしが北海道に住んでいたことは、毎週のように三笠市の桂沢湖と夕張市の里山で目撃談が聞かれました。
北海道ではヒグマが出たからと言っても別段騒ぐと事はなく、ヒグマが出ているから出来れば近寄らず、やむ終えず立ち入るときは注意してくださいという意味合いが強いです。
2002年に千歳市の烏柵舞林道を走り終えて出口で休憩をしていたら、そこにヒグマが出没しているので注意してくださいと書かれた看板を見つけました。黄色なのでよく目立ちます。
日付を見ると最後に目撃された日がなんと昨日でした。ヒグマの1日の移動距離からすると、確実に今通った道の周辺にいたはずです。反対側の入り口には看板はなかったので、通過した後では後の祭りですが。
烏柵舞林道の出口は、千歳市の郊外にある住宅地から4kmほどのところにあります。
掲載した画像は看板が立っていた烏柵舞林道の中にある交差点です。
一番上の文章に書かれていますが、8年ぶりにヒグマに出会った場所に行って来ました。
場所はオホーツク海側の町、紋別郡西興部村ウェンシリ岳キャンプ場です。今は遊歩道が閉鎖されていますが、当時は氷のトンネルを見ることが出来たので有名な観光地でした。もう閉鎖されてしまったので、実名を出してもかまわないでしょう。
キャンプ場を通る道の緩やかなカーブを通り抜けると、その先にヒグマが立っていました。写真の道がその直線です。
当時の文章を読むと50m位と掻かれていますが、実際に今回、歩幅で距離を測ってみたところ、カーブとカーブの間の直線区間がほぼ30mでした。わたしもヒグマもカーブよりは直線の方に進んでいたので、たぶん20m前後の距離での遭遇だったと思います。
このときはウェンシリ岳登山のためにここに来たのですが、登山口と山頂を往復する間におそらくヒグマの糞と思われるものを4つ見かけました。
ひょとすると、わたしのであったヒグマはまだ元気で、この辺りで生活しているのかなと考えると、懐かしくもありました。
ウェンシリ岳の山頂から見た麓の森林です。一番近い町の滝の上の市街がかすかに見えるほど、人煙は希です。
ヒグマは賢く用心深いので、通常日中は人と接触をする機会が多いのであまり出歩きません。夜行性動物ではないので、日の明かりのある明け方や夕方に主に活動するそうです。わたしのであった時も午後5時から6時くらいでしたから、わたしの方にヒグマに対する知識が有れば、避けられた遭遇でした。
H.N.うーたん(Yuichi Mizunuma)
当サイトの執筆・撮影とシステムの製作等全てを行っています。林道への案内板やクライミングトークのWebMasterでもあります。使用バイクのジェベルXCは1997年型、2002年型と乗り継ぎ、三台目の2004年型のジェベルXCを売却して、現在はバイクツーリングには行っていません。、これまでのツーリングの総走行距離は約21万kmです。
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2013年まで、春夏秋冬、北海道から九州沖縄まで、ツーリング・登山・サイクリング・パドリング(カヤック)をしています。年間のテント泊数は40泊から60泊程度、日帰りを含めると年間80日くらいはアウトドアにいました。
現在は東京都八王子市高尾に在住しています。オートバイから少し離れていて、主に登山とサイクリングを趣味にしています。
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